認定NPO法人 ファーストアクセスは2017年9月2日、中国電力さんと電源開発さんの合弁会社である大崎クールジェンさんとバイオマス発電機器メーカーSpannerさんの協賛により、世界最先端の低炭素発電技術をテーマとした国際シンポジウム「東京炭素会議2017−最先端の温暖化対策技術」を、東京大学の国際協力学生団体GREEN HEARTSと共催で開催しました。
「ドイツ企業の温暖化対策技術」
ハンス・カール・フォン・ヴェアテルン駐日ドイツ大使閣下
最初に登壇したのは世界でも有数のエネルギー先進国ドイツのハンス・カール・フォン・ヴェアテルン駐日大使であり、「The Low-Carbon Energy Policy in Germany」についてご講演され、「化石燃料から再生可能エネルギーへの転換策」を意味するドイツ語"Energiewende"をキーワードに再生可能エネルギーが最大の電源となったことを挙げつつ、経済面でもそれが国民に支持されている事などをご紹介下さいました。
「小型木質バイオマス熱電併給のインパクト」
Spanner株式会社 代表取締役 オスカル・バルテンシュタイン(博士)
続いて木質バイオマス熱電併給機器を提供している独Spanner日本法人のバルテンシュタイン社長が「小型木質バイオマス熱電併給のインパクト」について語って下さいました。
バイオマス・コジェネレーションのメリットを市場経済・分散型・熱電併給・再生可能・国内産という5つの観点から分析され、「従来型の電力システムでは燃料から得たエネルギーの約3分の2が無駄に捨てられている」「産油国では石油利権が原因で内戦が続いており、石油燃料を使うという事は戦費を払っていることに等しい」と指摘。
また、バイオマス・コジェネレーションから生み出される「電気」と「熱」に加えて、近年では電気自動車の技術進歩が著しいことから「交通」という新たなサービスが加わり(バイオマス発電によるEV充電)、バイオマスがより完全なエネルギー社会を実現させている事が分かりました。
「究極の石炭火力技術"CO2分離・回収型石炭ガス化燃料電池複合発電"の実証計画と進捗状況」
大崎クールジェン株式会社 総務企画部 研究企画グループ サブマネージャー 村上 康浩
後半の一人目として登場して頂いたのは、エネルギー資源の少ない日本において環境負荷の少ない低炭素な石炭火力技術を開発するために、中国電力さんと電源開発さんによって設立された大崎クールジェン株式会社さんの村上康浩 研究企画グループ サブマネージャーでした。
石炭火力は経済性とエネルギー安全保障の点で優れているのみならず、ベース電源として電力システムに欠かせませんが、一方で他の化石燃料と比べて多くのCO2を排出の点が難点とされます。そこで同社が目指すのは「火力発電」+「CO2分離・回収」「燃料電池」という3つの異なる技術の粋を集めて発電効率を限界まで高めた「石炭ガス化燃料電池複合発電」技術であり、村上サブマネージャーはその概要と発展段階をご紹介してくれました。
第1段階:過去に例のない高効率な石炭火力技術「酸素吹石炭ガス化複合発電(IGCC)」の実証試験
第2段階:CO2分離回収設備の追加により環境負荷を低減
第3段階:燃料電池システムにより更なる効率の向上を目指す
既に2017年3月には第1段階のIGCC実証試験を開始しており、続く第2段階は2020年度内には完了させる見通しで、最終段階となる第3段階は2021年度を予定している。
「世界初のCO2の100%回収が可能な発電システム -システム概要とデモプラントの開発状況」
株式会社 東芝エネルギーシステムソリューション社 統括技師長 佐々木 隆
続いてご登壇いただいたのは東芝エネルギーシステムソリューション社の佐々木 隆統括技師長であり、世界で初めて成功させた「100%のCO2分離・回収」についてプレゼンテーションして下さいました。
これまで火力発電技術は「亜臨界圧(Sub-Critical)」→「超々臨界圧(USC:Ultra Super Critical)」→「A-USSC (先進超々臨界圧火力発電)」あるいは「IGCC (石炭ガス化複合発電)」のように変遷してましきたが、今回の「超臨界CO2サイクル発電システム」は、温室効果ガスであるCO2を敢えて有効活用することでNOxを排出しない革新的なシステムを実現しました。この技術の注目すべき点は;
@CO2の分離・回収は非常に困難な技術であり、これまでは90%が限界とされてきたが、この超臨界CO2サイクル発電システムにおいては「Oxy-fuel Combustion法」という新技術を使って100%を初めて達成させたおと
ACO2を分離して回収する設備を別に設置することなく,高純度の高圧CO2を回収することができること
の2つであり、低炭素な社会づくりの確実な実現に大きく貢献してゆくものと思われます。
「低炭素社会を実現させる政策と技術」
<パネリスト>
ハンス・カール・フォン・ヴェアテルン駐日ドイツ大使、アンドレ・アラーニャ・コヘーア・ド・ラーゴ駐日ブラジル大使、独Spanner オスカル・バルテンシュタイン博士、東芝 佐々木 隆統括技師長、大崎クールジェン 村上 康浩研究企画グループ サブマネージャー
<モデレーター>
東京大学 公共政策大学院 教授 有馬 純
最後は「低炭素社会を実現させる政策と技術」をテーマにしたパネル・ディスカッションで、モデレーターとなって下さったのは温暖化交渉に関する日本政府の元首席交渉官・有馬純東大教授でした。
まずは、ここから参加してくれたブラジルのアンドレ・アラーニャ・コヘーア・ド・ラーゴ駐日大使が「低炭素技術」というタイトルでご講演。ブラジル外務省において最もエネルギー/気候変動について詳しいラーゴ大使が、その深くて広い知識を駆使して力強く語って下さいました。
そしていよいよ国際シンポジウムは最後のパネル・ディスカッションへと移りましたが、ここでは東京大学の有馬純教授が各パネリストの発表内容も踏まえた見事な仕切りを披露しつつ自在に切り口を変化させながら回答者を指名し、大いに盛り上げて下さいました。
MC
王菁(認定NPO法人 ファーストアクセス 常務理事)